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05/2008 最近読んだ本

中島みち「尊厳死に尊厳はあるか〜ある呼吸器外し事件から〜」岩波新書2007.9

時代にあったスリリングな本である。

後期高齢者医療制度の導入、介護保険制度の疲弊、従事者の希望と絶望感、そして無関心が支配する医療・福祉現場での仕事を考える際に、避けられない問題提起の書と思う。
一部を引用すると、次の通りであるが、是非一読をおすすめしたい。

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・医療の中の尊厳死とは、最後の一瞬まで尊厳ある生が守られるてこそあるものではないか。それは、その時代と社会に相応の医療の質を満たした医療者が、話し合いの中で、患者自身の死生観や患者な対する家族の想いへの理解に努めながら、明らかな過剰医療に渡らぬ範囲でできる限りの手を尽くし、患者あるいは家族が、その死を、納得とはいかなくとも、少なくともあきらめを持って受け入れられるもの

・医療とは医学を取り入れた実践の技術である上に、医師の能力にもサービスがあり

・患者の身体には個体差があり、病状も様々

・八十代で、これほどに過酷な手術を受け、最後の何日かは、口角からも鼻からも、身体のあらゆるところから血が噴き出し、全身浮腫り状況の中で、やっと心臓が止まったのに、なおも蘇生処置を施され生かされる患者

・人間の死とは何かについての定義は法律で規定されていません。しかし、肺、心臓、脳という三つの器官の不帰の点を、呼吸停止、心拍停止、瞳孔拡大という誰の目にも明らかな徴候とらえる。三徴候死、いわゆる心臓死は、長い長い人間の歴史の中で慣習的に死として定着しています。従って、臓器提供目的の場合以外は、依然として心臓死をもって人間の死とされており・・

・日本尊厳死協会が、一貫して「患者本人の意思決定尊重」、「不治かつ末期における延命措置の不開始ないしは中止を求める」患者の権利の法制化運動の中心理念

・医師の共通認識の一つとして「見るに見かねるから早く楽にしてやって欲しい」などさんざん頼んでいた者でも、・・付き添いの疲労や不安から解放されると、もっと手を尽くして生かすことはできたのではないか・・などと悔やむもので、医師が早く終わりにしたのではないかなど、後になって言い出しかねない。

・現在、医師の質、医療の質には全国的にバラツキがあり、特に終末期医療では、一部の過剰延命治療への反省から、一人ひとりの患者にとっての真の尊厳とは何かを求めて、悩み苦しみながら研鑽をつむ医師たちがたくさんいるものの、他方、そうした風潮や「死人に口なし」をよいことに、遺族からに訴えられない範囲で、安易に治療を打ち切るような医師たちも増えてきている感触があります。

・(アメリカの尊厳死についての説明野中で)最も大きな影響を及ぼしたのは医療費支払い事情の問題で、これは現在までつながっています。日本とは比較にならぬほどの医療費の高さにも関わらず、日本のように国民すべてをカバーする健康保険制度が存在せず、純粋に個人としての民間保険加入者は国民の10 人に1 人にとどまり、企業負担による民間保険制度の複雑な運用管理事情もあって、常に国民の六人に一人は全くの無保険者という状態にある。(映画「シッコ」でわかりやすく描かれている)

・問題は、あまりにも粋すぎた過剰な延命措置や、死んでいく本人よりも周りの都合で決める延命中止でしょう。私は、現在では延命措置の不開始、差し控えは、全国的に医療現場にかなり定着してきており、さらに一度は救命のために呼吸器を装着した場合でも、生きられる可能性がなくなったときは、延命治療のための薬剤の差し控えなどを含め、真の尊厳死といえるもものは、医療の質の高い現場では、静かに実現されているという感触を抱いています。高齢社会が現実のものとなった今、その正念場と覚悟して、患者本人の意思を尊重しながら、最後の一瞬まで尊厳ある生を支える終末期医療の質の確保に力を注ぐことこそ、問題解決の早道ではないでしょうか。

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本文の大半は「射水市民病院」でのX医師による呼吸器外しの事例に関する記述である。七例の事例について詳細に調査することで、それがどのような場面でおきたのか、またそれが安楽死や尊厳死と呼べるものなのか、についての記述である。

これは医療現場での出来事である。翻って、介護現場では何が起きているのか。また、介護現場でも、在宅での支援にシフトしつつある中で、理念はさておいて理念を支える実体が準備されているのだろうか。

2000 年に導入された介護保険制度の理念の希薄化(自己決定、事業者の参入規制の緩和の事実上の撤廃)がすすみ、同時に介護報酬額の問題から「人材流失」が起きていると思われる現状は危機的とも思う。

医療現場での医師たちの苦闘ほどの苦闘が、介護現場の「ケアマネジメント」で起きているのだろうか。一人の人間を支えるケアマネジャーたちの質の向上は急務であるが、極めて厳しい環境にある。

 
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